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「孤宿の人」

宮部みゆき著 「孤宿の人」 を読みました。宮部さんらしい、市井の人々に対する暖かいまなざしも感じられますが、政治の力に翻弄される人々のやるせなさが胸に迫る力作だと思いました。

舞台は江戸時代、金毘羅詣での拠点でもある、四国の小藩である丸海藩に、江戸から大罪人ではあるけれど、元幕府の要職にあった、加賀殿がお預かりとなって送られてきます。妻子、部下を殺し、その理由も明かさず、悪鬼と恐れられている方です。

一方、江戸の大店の女中と若旦那の子と生まれ、母をなくし、邪魔者と疎まれていた薄幸な少女、「ほう」も、ひょんなことからこの藩にながれつきます。匙(医者)の家に引き取られ、やっと人間らしい扱いを受けることができたのですが、彼女をいつくしんでくれた、匙家の娘が殺され、それを発端に「ほう」の運命も二転三転します。

丸海藩には、次々と厄災が降りかかり、「ほう」を妹のように思ってくれた、引手(岡引?の手下)の少女、宇佐を初めとして、匙家の人々など、多くの人が翻弄されます。人々はそのすべてが、かの悪鬼となった加賀殿の仕業だと恐れますが、「ほう」はその、加賀殿の押し込められた屋敷に下女として働くようになったのです。

「ほう」は思いがけないことから、その加賀殿に手習いをすることになるのですが、そこには微かな心の交流が生まれます。しかし、もう運命の流れは決まっており、最後の大きな悲劇は起こるべくして起こるのです。

身分は低いけれど、必死で自分の生業を生きている人々も、政治の起こす大きな波、そして自然の猛威には、成す術を知らない。それは現代でも、同じようなものかもしれません。けれども、「ほう」のような無垢なものこそが、返って本質を見ることができ、生き抜いていくことができるのでしょう。過酷な運命を背負った、加賀殿と「ほう」の、心が触れ合いには、感動しました。

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コメント

読了されたんですね。やはりめろんさんは感想を上手に表現できる!うらやましいです。

ほんの200年位前は、人々の暮らしは自分の生きていくスペースというか、運命が決まっている時代。
伝説や、昔話が日常や人々の心の中に息づいていた世界観。
無知でも、果てしなく無垢な「ほう」は暗黒の中の光、と思いました。

投稿: まきち | 2006年4月24日 (月) 10時02分

あいかわらず読書に励んでいらっしゃいますね。
いつも感化されながらも本に手がのびません。宮部みゆきは好きなな作家ですからいずれよんでみたいわ。
時代小説はあまり読んだことがないのですが面白そうですね。

投稿: ちまき | 2006年4月25日 (火) 17時35分

ほんとめろんさんはよく読書されるのに感心します。本はいろんなことを教えてくれますよね、感動したり、考えさせられたり・・・私も読書しようと思いながら、最近は目が・・・。もともと視力がよかったので、老眼がきてて、メガネかけるほどでもなく・・・なので、小さい字を見るのが今は億劫です。でもめろんさんのブログ読むたびに、私も本を読もう!と思う今日この頃です。

投稿: フラワー | 2006年4月26日 (水) 17時05分

せっかくコメント頂いたのに、遅くなってごめんなさい。

☆まきちさんへ

現代は自由度は増したけれど、それだけに、迷いも多く、ストレスも多いかもしれませんね。ほうのような、無垢な心は人の心を打ちますね。

☆ちまきさんへ

私も時代小説は苦手な部類ですが、これはなかなか良かったですよ。宮部さん、この頃時代物が多いですね。
励んでいるわけじゃないんですが、気分転換には一番手近ですから。

☆フラワーさんへ

フラワーさんはいろいろな事があったから、落ち着いて本を読む気分じゃなかったんじゃないかしら。目はね、私はド近眼なので老眼は遅いみたい。何とか読めています。好きなだけで、乱読ですが。

投稿: めろん | 2006年5月 1日 (月) 02時46分

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