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「温室デイズ」

Pict0033 瀬尾まいこ著「温室デイズ」を読みました。前に「優しい音楽」を読んだのですが、同じように癒し系のあたたかい物語かと思ったら、「いじめ」がテーマの、切ない小説でした。すごくリアルな感じがしたのですが、なんと、著者は現役の中学教師なんですって。それを知ると、ますます、今の子供達の置かれた状況が映されているようで、苦しい気持ちになります。私の子供時代には、こんなに陰湿ないじめは、覚えがないのですが、学歴社会、格差社会、管理主義の教育といった、社会のせいのような気がします。

みちると優子は中学3年生、クラスは荒れていて、段々手がつけられない状態にむかっている。優子は可愛く、豊かな家庭に育ってまっすぐな気性なのだが、それゆえに小学校でいじめを受け、転校した過去がある。そのとき、同級生だったみちるは積極的ではないにせよ、いじめに加担してしまったことを心苦しく思っていた。中学で再会した二人は今では親友となっているけれど、受験を前にして、息苦しい日々を送っている。

何とかしなければ、何とかなるかも、という思いがあふれ出し、ある日みちるはクラスで皆に呼びかける発言をし、それをきっかけに壮絶ないじめを受け始めてしまう。それをどうもできない優子も、登校ができなくなり、保健室に登校したり、学校外のフリースクールに行くようになる。そして、母親の勧めでカウンセリングにも行くけれど、何も解決はしない。

みちるに対するいじめはますますエスカレートし、ひどい暴力を受けた日、それまでいじめを隠していた父に事実を知られてしまう。父子家庭で、理解のない頑固者だと思っていた父の涙と、「学校なんか行くな」という、思いがけない言葉を聞き、みちるは改めて、耐え続け、学校に行き通し、精一杯の受験勉強をすることを決意する。

みちるの幼馴染の瞬は、やくざの父、兄弟を連れて出て行ってしまった母、と言う酷い家庭で育ち、今では札付きの不良になっている。あるとき、その瞬が優子に告白するのだけれど、優子は戸惑ってしまう。けれど、彼の家庭のことを知った優子は一策を講じる。

色々な事があり、彼らは卒業に向かっていく。それぞれが、必死に生きながら。ほんの少しの希望を頼りに。

みちると優子の強さに心を打たれました。又、それぞれの家庭のあり方に、考えさせられました。優子の家庭は、一見申し分ないようだけれど、親は彼女の心を理解していない、と言うより、本当には理解しようとはしていない。みちるの、理解しようとするよりも、子供を守ろうとする愛を持った父。悲惨なのは瞬の、母親に捨てられた孤独と、コントロールできない自分を父親に重ねてみる、やりきれなさ。

いじめに対する解決策はあるのでしょうか。子供達に話すと、口をそろえて「いじめは絶対無くならない」と言います。いじめによる自殺もあとを絶ちません。そのたびに、胸を締め付けられる思いがします。命を自ら絶った子供、そして残された親の悔しさや、自分を責める気持ちを考えるとたまりません。

中学生の方、この本を読んで欲しいですね。そして、自分の気持ちを重ねてみて欲しいです。いじめを受けている人には、みちるの選択が全てでは無いといいたい。学校は命を賭けてまで行かなくてはならないところではないと思います。

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コメント

子供は社会を映す鏡です。大人の世界にもいじめはあります。それが子供だとセーブする力がないからとことんまでいってしまう。
そして、いじめられた子供の壊れた心は修復が難しい。いじめたほうはすぐに忘れてしまってもいじめられたほうは一生背負う傷ができてしまう。なんともやりきれない現実です。
また、いじめられた子供が今度は自分より弱いものをいじめるというのもよくあることです。これも大人の世界と同じですね。
私もいじめはなくならないと思う。でも、それをセーブする力を身につけて欲しい。それはやはり家庭の力かな。家庭での愛情に飢えてる子が多いと思うのです。
むずかしいね。
この本を読んだら落ち込んでしまいそうで怖いわ。

投稿: ちまき | 2007年4月25日 (水) 18時31分

☆ちまきさんへ

遅くなってごめんなさい。ずっとさぼってしまっていました。
いじめの問題は難しいですね。私たちの頃は、こんなに陰湿ないじめは無かったように思うんだけれど。(社会が複雑になったのを映しているのかしら。)だから、あまりピンとこなかったんだけど、この本を読んで、子供達の気持ちがほんの少し分かったような気がしました。著者が現役の先生だからリアルなんでしょうね。でも、解決は難しい・・もう、私たちの子供達は大きくなったけれど、孫(いつのことやら)のこととか、考えると人事ではないもの。おっしゃるように、家庭環境は一番大事でしょうね。家庭で幸せなら、いじめたりしないと思うんだけど、そんなに簡単なものでもないかしら。

投稿: めろん | 2007年5月 6日 (日) 14時55分

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