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「こんな夜更けにバナナかよ」

Burogu_2 息子のお勧めで読みました。

渡辺一史著「こんな夜更けにバナナかよ」

進行性筋ジストロフィーという難病に侵された、鹿野さんの壮絶な闘病、というより、類まれな生き方の記録です。

もともと転びやすいなどの症状はあったものの、鹿野さんが筋ジスと診断されたのは小学6年の時。そして専門の病院、養護学校、授産施設などを経て、彼は自立を決意します。勿論、体の自由が利かないので、彼の場合は、在宅で介護者による介護を受けての生活ではあります。それでも、障害者は施設か自宅での介護を受けるという、選択しか考えられなかったのですから、画期的なことです。施設では、当然といえば当然ですが、規則に縛られた生活ですし、家族に負担を掛けることも良しとしなかった彼は、自分の意思を最大限実現する道を選んだのです。

彼は大勢のボランティアに時間刻みで介護されながらも、あくまでも主役として生活を始めます。ボランティアのコーディネーターから、介護方法の講義も自分でやりながら。

彼のすごい所は、障害者だということで、決して負い目を感じないで、出来ない人が出来る人に介護を受けるのが、普通の事と割り切っていけるところでしょうか。だから、ボランティアにも、一切遠慮はない。介護が下手だと怒鳴りつけ、自分のしたいことは遠慮などせずどんどん指示する。この本の題も、ある深夜、泊まりのボランテァを起こして、「バナナが食べたい」と、言ったエピソードからなのです。気分やで、ある意味わがままといえるほどの自我の表現には、耐えられず止めていくボランティアも数多くいました。

あるときは落ち込み、病気の苦痛に苛まれながらも、彼が生きようという意志を持ち続けたのは感動的です。勿論、「もう、死にたい」と叫ぶ事も1度や2度ではなかったのですが。

病気は進行し、ついに彼は人口呼吸器を装着しなければ、生きられなくなります。そうなったらもう、病院から出られないというのが常識だったのですが、彼は自宅に戻りたいといい続け、その執念は医師たちも動かし、ついに呼吸器をつけた在宅生活をします。そのためには、痰の吸引という医療行為を伴い、それを素人のボランティア達が、必死に担ったのです。

著者の渡辺さんは、障害に特に興味を持っていたわけではなかったそうですが、鹿野さん自身や、多くのボランティアに取材するうちに、すっかり巻き込まれていくと同時に、鹿野さんをめぐる人間関係に驚き悩んだようです。

なんと、鹿野さんは、この状態で、結婚、離婚、恋愛なども経験しています。正直に言って、驚きでした。鹿野さんにも、相手の女性にも。尊敬さえかんじてしまいます。

鹿野さんは、42歳で、逝ってしまわれました。それまで、幾度となく入退院を繰り返し、不死身とまで言われたのに、あっけない、静かな最期でした。葬儀には、何百人ものボランティアなどの人々が駆けつけました。そして、わがままで、優しくて、強くて弱かった、鹿野さんをしのびました。

鹿野さんの人生は過酷でした。でも、彼ほど多くの人と濃密な関係を持ち、影響を与えた人も珍しいと思います。彼ほど、自分の課せられた人生を生ききった人もいないかもしれません。

この本のすごさをなかなか伝え切れません。出来れば、多くの人にお勧めしたい一冊でした。

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コメント

こんにちは。
ごめんなさい、私このタイトルをみて笑ってしまいました。
私は小学校、中学校、同じ会社に障害を持っている人に出会いました。
小学校の理科の先生で、すごく意地悪で人の欠点や傷つく事を平気で言う先生でした。
今思えばもしかしたら悲観や虚勢を張っていたのかもしれません。
ある小説で、ボランティアを受ける側とする側の事が少し書かれていました。
それとは真逆のような感じがします。
でも実態や当人の気持ちを知っておく事も良いかもしれない。
すぐには無理かもしれないけど、
予約リストに入れておこうと思います。

投稿: fumika | 2008年5月17日 (土) 12時36分

またまた重い題材の本ですね。
なかなかそういう本を手に取れない私です。
でも、ほんとは読んでみるといいんでしょうね。

いつもながらに仲のよいご家族ですね。やっぱり自然のなかに出るのって癒されますよね。我が家はみなばらばらでしかも夫は外に出るのが嫌いときてるんですよ。なるべく外に出るよう働きかけてるんですけどね。

投稿: ちまき | 2008年5月23日 (金) 22時52分

☆fumikaさんへ

そうですか。障害を持っている人の気持ちは、なかなか想像できませんね。私は、今までまわりにそういう人がいなかったので、よけい分かりません。自分からちかずく気もなかった・・
今、息子が知的障害者の面倒を見るボランティアをしていて、話を聞くと、とても大変そうです。
この本を読んで、少しだけ、色々な事、分かったかも。基本は当たり前ですが、皆同じ人間だって事ですよね。

☆ちまきさんへ

いつもこんな本ばかり読んでいるわけじゃないんですけど、印象が深いので、アップするのが、重い内容の本になってしまって。

そういえば、旦那様とのお出かけ、あまり見ないような。海外は別なのね。夫は結構出かけるの好き、特に皆で行きたがります。でも段々、2人になっていくんでしょうね。

投稿: めろん | 2008年6月 3日 (火) 22時04分

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