« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

「最悪」 「対岸の彼女」

最近読んだ本の中からの2冊です。

Photo

奥田英郎著「最悪」は、鉄工所を経営する中年の気弱な男の川谷、銀行OLのみどり、パチンコで何とか生活している21歳の和也の3人に降りかかるそれこそ最悪な、出来事の嵐を面白おかしく書いているが、ちょっと身につまされる。

川谷は不況の中、仕事に追われつつ喘ぐような生活の中、仕事の受注もとの担当者に勧められ、高価な機械を入れて仕事を拡大するという、彼にとって初めての冒険をしようと決意する。それには大金を銀行から借り入れなくてはならない。しかし、そんな川谷に頭の痛いことが起きる。工場の騒音について、近隣のマンションの住人から抗議を受けるのだ。

みどりは版を押したような銀行業務にうんざりしているが、ほのかな好意を寄せるエリート行員と親友がホテルに入るのを見てしまう。そして、いやいや参加した支店ぐるみのバーべキューの夜、こともあろうに支店長からセクハラを受け・・・

和也はパチンコ屋で知り合ったチンピラと組んで、深夜の倉庫に盗みに入るが、使ったやくざの車が目撃されていた。やくざにリンチされ、大金を要求されて、更に犯罪を重ねるのだが。

3人ともやることなす事自分を追い詰める最悪な結果を手繰り寄せ、それぞれの人生が交錯したとき、追い詰められた彼らはどうなるのか?

と言ったようなお話で、奥田さんらしいスピーディな展開で、ついつい読んでしまいます。ありそうで、それはないでしょうという感じ。この3人を含めて、登場人物がまた、いかにもいそうな感じ。ちょっと深刻なコメディとでもいうのかな。この3人の中では川谷が一番かわいそう。今の不況の中、こんな町工場の経営者居るかも、と思ってしまいました。

Photo

これは角田光代著「対岸の彼女」。いつも読んでいるブログの中で紹介されていたので読んでみましたが、面白かった。

幼い娘と公園めぐりをしている主婦、小夜子は友達を作れない娘に悩んでいた。それは、元々周囲に溶け込むことが苦手な自分自身に対する悩みでもあった。そんな彼女が、仕事をすることを決意し、やっと見つけた会社の社長は小夜子と同い年で同窓の女性だった。仕事は、会社が新しく立ち上げる家庭向けの清掃業だったが、きつい仕事の中にやりがいを見つけていく小夜子、そして自分とは対照的な社長、葵にあこがれとも友情ともつかない気持ちが膨らんでいく。

葵には、少女時代いじめられたことがあり、そのために引っ越しまでして入学した学校でできた親友との、忘れられない友情と、世間をにぎわすことになってしまった過去があった。

小夜子と葵の今と、葵の少女時代が並行して語られるのだけれど、どちらにも共感できる部分があって、胸がちくちくする感じでした。この本を紹介してあったブログでは、この本は「生きにくさ」が、良く書かれている、とありました。男性のブログです。男性が読むと、そういう感じなのかな、と思いました。私には、これは「女性の生きにくさ」が書いてあって、だから共感できるのだと思いました。勿論、女性も人間だから同じことかもしれないけれど。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

村上春樹さん ガザ攻撃批判

これは昨日の朝日の夕刊の見出しです。

作家の村上氏が、イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞を贈られ、その授賞式での事です。イスラエルのパレスチナのガザ地区への攻撃には世界中の人が胸を痛めていると思います。攻撃で、1300人以上が死亡し、大半は一般市民で子供や女性が多く含まれています。誰か忘れましたが、「一発殴られたら、相手の家族を皆殺しにするようなものだ。」と言っていましたが、全く同感です。そして、世界一の大国、アメリカはあくまでイスラエルを擁護しています。アメリカでのユダヤ勢力の大きさがどんなものか分かります。あのオバマ大統領でさえ同調しているのですから、無力感さえ感じます。ユダヤの人たちは、大戦で悲惨な目にあったというのに、どうしてこんなにひどいことをできるのでしょうか。

村上氏の授賞式への出席には反対する団体もあり、実際、01年と03年の受賞者は欠席し、イスラエル批判のビデオスピーチを送ったそうです。でも、村上氏は迷った挙句、出席して、メッセージを伝えることを選びました。テレビでも報道されていましたが、個人を卵にたとえ、「たとえどのようなことがあっても、私は、卵の側に立つ。」と発言しました。

立派だったと思います。世界中に報道され、インパクトも大きかったと思います。作家は社会的な発言をしない人が多いように思いますが、(大江健三郎さん等の例はありますが)村上さんは、小説以外にも、地下鉄サリン事件のインタビューをまとめた著書などもあり、当然社会に大きな関心をもった方だと思います。私は長年の村上ファンなので、特にうれしく思いました。社会に影響力を持った方たちは、もっともっと、発言していただきたいものです。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

「シズコさん」

Photo

佐野洋子さんの「シズコさん」を読みました。佐野さんのお母さんの事、お母さんへの思いを彼女らしく、飾り気のない言葉で綴った本です。

「4才くらいの時、手をつなごうと思って、母の手をつかんだら、チッと舌打ちして邪険に手を振り払った。私は2度と母と手をつながないと思った。そして、母と私のキツイ関係がはじまった。」このエピソードには胸を突かれます。

大連で暮らしていた一家は、敗戦で苦労して引き揚げる。そして、その頃、7人もの子供たちの男の子3人もが次々と死んだ。生まれてすぐに死んだ弟、虚弱でも優秀だった兄が死んだときはこの子を溺愛していた母は悲嘆にくれた。そして、彼女が親のようにすべて面倒を見ていた弟も死に、彼女と妹2人、弟1人が残された。

引き揚げてから、母の彼女に対するすざましい虐待が始まる。決して泣かないで耐える子どもは、かえって母の気持ちを逆なでしたのだろうか。

やがて、虐待もおさまり、中学受験に成功して、長い反抗期が始まった。父が亡くなり、それでもたくましく母は仕事を見つけ、4人の子供を大学にまでやる。彼女も、美大を出て、結婚し母と離れて自分の人生を生きていく。

けれど、弟夫婦と同居した母は、嫁とうまくいかず、3人の娘たちに電話をかけては愚痴を言うようになり、次第にぼけていってしまう。母親の性格を知っている娘たちは、愚痴を聞き流していたけれど、まんざら嘘ではなかったことを知ることに。そして、自分で手に入れた家を出た母は彼女の家にやってくる。彼女の連れ合いに遠慮して、おとなしい母を不憫に思っても、どうしても母を愛せない彼女。そして愛せない自分に付きまとう罪悪感。

ボケは進み、仕方なく最上級のホームに母を入れ、でも、「愛せない母を捨てた」と、ますます自分を責める彼女。

すっかりぼけてしまった母を見舞ううちに、一度も触ったことのない母の手をさすり、幼女のような母と会話を交わすうちに、母を許していく彼女はやっと心の平安を得られたのでしょうか。

彼女にはつらく当たった母だったけれど、いつもきれいにお化粧し、家を整え、料理がうまく、父が連れてくる客たちを歓待した。主婦としては完ぺきだった母を、尊敬しているもう一人の彼女も存在しました。また、家計の切り盛りもうまく、働き者で、社交的でもありました。なぜ、自分の子供にもっと愛情を注げなかったのか、不思議です。

なんだか、身につまされる本でした。親に対する気持ちって複雑です。よほど、出来た親でなければ、いろいろありますよね。

私も、母に対しては割り切れない気持ちがあります。佐野さんほどのキツイ関係ではないけれど、許せない部分があるんです。そして、その自分が情けないんです。だから、彼女の気持ちは、すごく分かります。切ないですね、親子って。他人なら付き合わなければいいけれど、親子はそうはいかないし、老齢になれば、ほってはおけない。

この本にも書いてありましたが、親が嫌いと(そう単純ではないと思いますが)いう人、親を大好きでべったりの人、世の中にはいろいろな関係があるんでしょうね。そして、自分の問題は自分にしか分からないし、自分で何とかするしかないわけです。

ぼけてしまったお母さんではあっても、少しお母さんを好きになれた佐野さん、良かったですね、と言いたいです。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

「脳にいいことだけをやりなさい」

Photo_3

仕事に行くと、駅のそばにいまどき珍しい小さな本屋さんがあります。小さいなりに、品ぞろえにこだわりも感じられて、応援したい気持ちもあり、よく目についた本を買うんですが、今回はこれ。マーシー・シャイモフ著、茂木健一郎訳、です。

脳科学者の茂木さんが絶賛しているんですが、内容は、脳の使い方によって、幸せになる方法・・見たいな感じ。まぁ、脳の働きにも少しは触れていますが、気持の持ちよう次第で、人間は変われるということで、そのポイントやコツが書いてあります。

訳者曰く、「本文にある7つの事を脳に馴らしていけば、あなたの脳は喜び、やがて驚くような結果を生んでくれます。」

7つの事というのは、

1.ネガティブ思考の「大掃除」をする。

2.プラス思考で、脳にポジティブな回路をつくる。

3.何事にも「愛情表現」を忘れない。

4.全身の細胞から健康になる。

5.瞑想などで脳を「人智を超えた大いなる力」につなげる。

6.目標をもち、脳に眠る才能を開拓する。

7.付き合う人を選んで、脳にいい刺激を与える。

そして、本文では、この7つの事を実現するためのノウハウが書かれています。う~ん、納得は出来ることばかり。でもちょっと難しそう、というのが感想かな。たとえば、脳を喜ばせる、というところで、感謝するとか人を許すとか出てくるのですが、感謝は割と易しいと思うんですが、許す・・これは難しいです。人を恨むことは自分を傷つけることであるというのはよくわかるんですが、自分に照らして、なかなかできないなぁ、と。許せない自分に罪悪感を感じて、苦しんでいる自分がいます。この本に書いてあるような、方法で、許せるといいんですが。努力するしかないですね。

こういう、ちょっとハウツー本みたいな本を読んでるのって、恥ずかしい気持ちがありますね。お金持ちになる方法とか、幸せになる方法とか、そんなものを手軽に手に入れようとする、浅ましい気持が恥ずかしいのかな。でも、根がミーハーなので、時々手を出します。いつもは付けてもらわないブックカバーを付けてこそこそ読みます。

いいことはいっぱい書いてあります。要はやる気というか実践するか、(実践できるか?)でしょうね。簡単なことから、たとえば、感謝の気持ちを持つとか、不平を言わないようにするとか。意識することで少しは変われるかもしれないですね。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »