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「シズコさん」

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佐野洋子さんの「シズコさん」を読みました。佐野さんのお母さんの事、お母さんへの思いを彼女らしく、飾り気のない言葉で綴った本です。

「4才くらいの時、手をつなごうと思って、母の手をつかんだら、チッと舌打ちして邪険に手を振り払った。私は2度と母と手をつながないと思った。そして、母と私のキツイ関係がはじまった。」このエピソードには胸を突かれます。

大連で暮らしていた一家は、敗戦で苦労して引き揚げる。そして、その頃、7人もの子供たちの男の子3人もが次々と死んだ。生まれてすぐに死んだ弟、虚弱でも優秀だった兄が死んだときはこの子を溺愛していた母は悲嘆にくれた。そして、彼女が親のようにすべて面倒を見ていた弟も死に、彼女と妹2人、弟1人が残された。

引き揚げてから、母の彼女に対するすざましい虐待が始まる。決して泣かないで耐える子どもは、かえって母の気持ちを逆なでしたのだろうか。

やがて、虐待もおさまり、中学受験に成功して、長い反抗期が始まった。父が亡くなり、それでもたくましく母は仕事を見つけ、4人の子供を大学にまでやる。彼女も、美大を出て、結婚し母と離れて自分の人生を生きていく。

けれど、弟夫婦と同居した母は、嫁とうまくいかず、3人の娘たちに電話をかけては愚痴を言うようになり、次第にぼけていってしまう。母親の性格を知っている娘たちは、愚痴を聞き流していたけれど、まんざら嘘ではなかったことを知ることに。そして、自分で手に入れた家を出た母は彼女の家にやってくる。彼女の連れ合いに遠慮して、おとなしい母を不憫に思っても、どうしても母を愛せない彼女。そして愛せない自分に付きまとう罪悪感。

ボケは進み、仕方なく最上級のホームに母を入れ、でも、「愛せない母を捨てた」と、ますます自分を責める彼女。

すっかりぼけてしまった母を見舞ううちに、一度も触ったことのない母の手をさすり、幼女のような母と会話を交わすうちに、母を許していく彼女はやっと心の平安を得られたのでしょうか。

彼女にはつらく当たった母だったけれど、いつもきれいにお化粧し、家を整え、料理がうまく、父が連れてくる客たちを歓待した。主婦としては完ぺきだった母を、尊敬しているもう一人の彼女も存在しました。また、家計の切り盛りもうまく、働き者で、社交的でもありました。なぜ、自分の子供にもっと愛情を注げなかったのか、不思議です。

なんだか、身につまされる本でした。親に対する気持ちって複雑です。よほど、出来た親でなければ、いろいろありますよね。

私も、母に対しては割り切れない気持ちがあります。佐野さんほどのキツイ関係ではないけれど、許せない部分があるんです。そして、その自分が情けないんです。だから、彼女の気持ちは、すごく分かります。切ないですね、親子って。他人なら付き合わなければいいけれど、親子はそうはいかないし、老齢になれば、ほってはおけない。

この本にも書いてありましたが、親が嫌いと(そう単純ではないと思いますが)いう人、親を大好きでべったりの人、世の中にはいろいろな関係があるんでしょうね。そして、自分の問題は自分にしか分からないし、自分で何とかするしかないわけです。

ぼけてしまったお母さんではあっても、少しお母さんを好きになれた佐野さん、良かったですね、と言いたいです。

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コメント

他人じゃなく母と子だから難しいって事が世の中には多々あるみたいですね。
お蔭で私と母は良好かな。
離れて暮らしてるから。
一時期3年ほど同居した事があります。
イライラした事も沢山。
家の中 しゃもじは1個で良いって言うあれ。
専業主婦が2人、角つき合わせては暮らせません。
私も少し若かった。
今はかばいあって暮らせるのに。
病弱、病気が母を我がままにさせてしまってる・・
そう理解出来ます。
母は何があっても世の中で1番の理解者です。これ自慢^^

めろんちゃんは葛藤がおありかしら。
私ね、父とは色々思う事があって水臭い関係でした。

投稿: りゅう | 2009年2月15日 (日) 21時11分

肉親は
愛憎こもごも
これも
前世の
因縁か

親子が
分かり合える
ようになるのは
子供が
40歳を超えるころ

投稿: ripple | 2009年2月17日 (火) 16時18分

☆りゅうさんへ

りゅうさんはお母様といい関係なのね。親子は愛情で結ばれるのが当たり前のようだけど、そう単純でもないのは、いろいろな人の話を聞いても感じます。
りゅうさんを理解してくれるお母様、素晴らしいですね。私は一度、それも最近、母に思いを言ったことがあるんですが、全く理解してくれませんでした。悪気はないんですけどね。やっぱり傷つきます。そして自己嫌悪・・・
りゅうさんがうらやましいです。病弱なお母様を今同様、大切にしてあげて下さいね。

☆rippleさんへ

若いころの方が
単純に母を愛せた
この年になって
葛藤を抱えている。
自分が悲しい。

自分の気持ちが、一番どうにもならないんです。母は社交的で、みんなに慕われています。佐野さんとおんなじ。でも、家族に対しては、非常にたんぱくです。子供を持って、それがわかってきたんです。性格の違いも大きいんでしょうね。

投稿: めろん | 2009年2月20日 (金) 11時56分

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