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名著講義・山川菊栄「武家の女性」

芥川賞の発表があると、文芸春秋を買うんですが、ついでにほかの記事も読みます。その中に、こんな記事がありました。藤原正彦先生のゼミの講義が掲載されていました。藤原氏は「国家の品格」で有名ですよね。私は読んでいませんが。題名が、右翼っぽい感じがして敬遠していました。それが、rippleさんのブログで、氏が新聞紙上で身の上相談をやったのをまとめた本が紹介されていたのを見て、面白そうだったので読んでみたら、ユーモアがあって、共感するところもあったので、この記事が目に留まりました。

山川菊栄は、名前は知っていた程度です。大正時代に女性解放運動の闘士と呼ばれた人です。その彼女が母を主人公に幕末水戸藩の下級武士の生活を描いた物だそうです。その本自体読んでいないのですが、講義の内容は興味深いものでした。

封建時代の女性は束縛されて自由もない、悪いイメージがありますよね。私もそうだったんですが、実はとても強く自立してプライドを持って生きていた女性も多かったそうです。夫との役割分担がはっきりしていて、家事育児全般は一切取り仕切っていました。勿論、財力はなかったけれど、今のようにお金の価値を重視した世界ではなかったので、それで卑屈になることはなかったのです。

その頃は妾を持つことも公認されていましたが、それも、家系を保つための手段として妻は公認していたのです。男の子が生まれなければ、家は絶えてしまうので、正妻は妾の面倒まで見たそうです。

この話のところで、学生が、そういうことなら我慢が出来るかもしれないけれど、性的な意味での妾はだめです、と言ったのが面白いというか、う~ん、と思いました。それから、顔も見ない相手と結婚するぐらいなら、浮気をして心中してやる、と言った学生もいました。

確かに、武家の女性は自由な外出はもとより、実家にも盆暮れに挨拶に行くぐらいとか、今から見ればとても大変です。七去三従と言って、儒学の教えでは、「子なき女は去る」「悪しき疾あれば去る」などなど、男尊女卑の思想には怒りを抑えられません。そんな中で、主君に命をささげていた男性に、献身することに価値を見出し、強く生きていた女性たちがいたんですね。

今で言えばフェミニストであった、山川が、「住みにくい世の中、激しい時代を静かに、力強く生き通して、はるかに明るく、生き良い時代の土台を作っていった私たちの前代または前々代の親愛なるおばあさんたちに、深い敬意と感謝を表しながらこの筆をおくことにいたします」と、この本を締めくくっているのは、ある種の感動を覚えます。そして、「一体にわれわれが考えるほど当時の女性たちが不幸だったとは言えません」という、一文が衝撃的です。

藤原氏は、山川が、当時の女性が幸せを感じていたかどうかを見つめている、と述べていられます。理不尽、不合理、不自由、不平等、貧困などより、人々の幸福感こそが本質と洞察した嗅覚はさすがであるとも。確かに、自由で平等で豊かであるにこしたことはないけれど、一番大事なのは、それで幸福になれるかどうかです。拝金主義に覆われた現代だからこそ、ハッとさせられます。

フェミニストというと、ちょっと融通の利かない頑なさを思い浮かべてしまったりしますが、元祖フェミニストの山川菊栄という人は、冷静で柔軟な考えをもった女性なんですね。

ここに書いたこと以外にも、嫁と姑の関係とか、いろいろ話題になっていて、学生の素直な発言と、藤原先生の時にユーモアたっぷりの応答も面白かったです。先生もおっしゃる通り、現代の若い女性にもいろいろな価値観があるんですね。ほとんど専業主婦の私は、ちょっと肩身が狭い気持ちもあったんですが、人それぞれ、自分の価値観をもちつつ、献身の気持ちも忘れずに生きていけばいいのかな、とそんなことも思いました。

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コメント

ある料亭の主人が、女の子が生まれたら喜んだと聞きました。息子は選べないけど婿は選べる。
私はまだ結婚してないけど、女性にとって子育ては大切なことで、嫁姑問題に煩わされないように、
婿を取るようにしたほうがうまく行くような気がします。
こうなったら「男の人」は辛い立場で、
外でがむしゃらに働かされるのかしら?

投稿: fumika | 2009年4月 2日 (木) 20時32分

☆fumikaさんへ

へぇ、なるほど。バカ息子が生まれたら困りますものね。そういう意味では女系の方がいいのかも。

戸籍はお婿さんでなくても、所謂、マスオサンは、結構多そう。私の世代では、息子でも娘でも、一緒に暮らすのはノーサンキューって意見が多いのよ。私もそうだけど。

投稿: めろん | 2009年4月13日 (月) 22時15分

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