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「終わらざる夏」

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浅田次郎著、「終わらざる夏」(上下巻)を読みました。著者自身の言葉では、この物語の主人公は戦争そのものです。私は戦後生まれで戦争は知らないけれど、父は2度の招集を受けたそうです。戦争の話も時々聞きました。でも、若い世代は、親も戦争を知らない世代。こういう本を読んで、戦争がいかに悲惨なものであるか、知ってほしいと思います。

敗戦直前から物語は始まります。一億総玉砕と国民が思いつめていたころです。しかし、ごく一部の軍の上層部は、ポツダム宣言受諾を予期し、米軍がやってきたときに備えて、通訳要員を配置することを急務と考えています。そして、45歳にもなった片岡が選ばれ、彼とともに、医者の菊池、鬼熊軍曹と名高い、富永が招集される。彼らを中心に、彼らの家族の思いも描かれて、それぞれが胸に迫ります。

彼らは、千島列島の孤島に配属されます。そこは、米軍が北から攻めてくるとの予想から、元関東軍の精鋭と完全な軍備が奇跡的に残されています。制海権を失って、移動しようにもできなかったのです。そして、敗戦。無念とほっとした気持ちがじわじわと広がり、米軍が来る前にと、軍備を破壊しようとしている時、カムチャッカ半島から爆撃があります。それはなぜか敗戦後なのに、ソ連軍からのものでした。そして、敗戦後の極北の戦いが始まりました。

戦争は当たり前ながら、国と国が争うと言う建前の裏には、人間一人ひとりの戦い、苦悩、家族に対する思いがあります。浅田氏はそれをこれでもかと言うくらい描き切っています。不覚ながら、又大泣きさせられてしまいました。稀代のストーリーテラーですね、彼は。

敗戦後にこんな戦いがあったとは全く知りませんでした。ソ連が憎いと思ってしまいますが、そこはぬかりなくと言うか、ソ連軍の将校の視点でもこの悲惨な戦いが描かれていて、それも個人より、戦争と言う組織的な暴力の非道さを訴えてきます。

是非多くの方に読んでもらいたい本だと思いました。

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